ユニバーサル上映環境とは、障害・健常の別にかかわらず誰もが共に参加できるよう、音声ガイド・日本語字幕・ミュージックサイン(挿入かや効果音などの音声情報をボディージェスチャーなどで表現)・磁気ループなどを準備して、誰もが同じ場所・同じ瞬間に映画の感動を分かち合うことのできる上映スタイルです。
会場の環境としては、多目的トイレ完備・段差の無いフルアクセシブルな会場を使用し、車いすスペースは限定することなく複数準備して、好きな場所をお選びいただける環境を整えたり、子育て中の親御さんが参加しやすいように託児無料サービスも準備しています。
また、パンフレットは通常サイズのものの他に、点字版や拡大文字版を準備し、希望に応じて受付で選んでいただき、場内には介助・誘導・アンケート用紙記入の代筆スタッフを整えて、全ての進行には、手話・文字通訳を完備します。
主題歌や挿入局などのBGMから、川のせせらぎ・鳥の鳴き声、電車の音などの背景音に至るまで、映画から流れてくるすべての音も作品の一部。意味がこめられています。
スクリーンの横で、映画から流れてくる音をリアルタイムで情感豊かなボディージェスチャーなどにより表現し、音から感じる喜怒哀楽を視覚化して、映画の芸術性を立体的に相乗していきます。
セリフ以外の効果音などの音情報には、無意識の感覚レベルでストーリー性に起伏や色彩を添え、感動を相乗させてくれる大切な効果がありますが、ミュージックサインはそれを視覚的情報として補っていくもので、聞こえる・聞こえないにかかわらず無意識の感覚レベルで選択し、さりげなく感動を引き立ててくれるツールとして楽しんでいただくものです。
ユニバーサル上映映画祭の音声ガイドは会場全体に流れるオープン方式で、ナレーターがライブでナレーションしていきます。
スクリーンを見ることができない視覚障害者の人たちだけのものであってはUDにはなり得ません。
見える・見えないに関わらず音声ガイドを耳にするすべての人たちにとって、映画の感動を後押しするものとして、映画の芸術性を大切にしながら行間に心地よく染み込ませるように作り上げています。
ナレーターは場内の雰囲気を肌で感じながら、リアルタイムにライブでシーンガイドをナレーションしていきます。
事前にガイドの台本は準備しますが、当日の雰囲気などによっては即興のアドリブが登場するところも当映画祭の醍醐味です。
映画のセリフをリアルタイムで字幕化するという聴覚障害者の情報保証のツールであることは勿論ですが、聞こえる人たちにとっても、聞き取りずらいシーンや方言のセリフのフォローとなったり、難しい言葉を文字化することで語意理解のサポートとなったりと、聴覚障害者のみならず、誰もが必要なときに共有できる有用なものです。
また、セリフだけではなく、音楽やサイレンの音・車の音など、音が流れているということを知らせるために、♪マークなどのサインを用いて可能な限り字幕情報として知らせています。
補聴器の周波数に合わせて、聞こえやすい空間(磁気ループ席)を用意しています。
専用席を一箇所に指定するのではなく、見たい角度・座りたい場所などのニーズに応じられるよう、複数のスペースを準備して、受付時にお選びいただきます。
公共の映画館などの会場では車いす専用席が必ず確保されているものの、それは一番前の列の両端であることが大半です。映画を鑑賞する環境としては最も劣悪な環境であることに気が付けている人は残念ながら多くはありません。長時間無理な体勢でスクリーンを見続けることは、特に体幹に障害のある方にとっては相当な負担となってしまいます。私たちの映画祭では、車いすスペースは必ずど真ん中の絶好のスペースを複数用意し、さらに本人が希望する場所を柔軟に選んでもらえるよう、ハード面とソフト面のユニバーサル環境の整備に努めています。
このような大切な気づきを皆で共有する場となることも私たちの映画祭が目指している姿なのです。